posted on 2013年5月23日木曜日

転職って大変だね

のぞむ
「博士~、は~か~せ~」



博士
「なんじゃい、のぞむくん。今日は何やら困っとるようじゃな。」



のぞむ
「うん、知り合いのおっさんがまた失業しちゃったんだって。」



博士
「君はおっさんにも知り合いがおるのか。」



のぞむ
「でね、職探しが大変だって言うんで、いろいろ聞いてあげてるんだよ。」



博士
「ふむ。のぞむくんに相談して一体何を期待しているのやら。で、そのおっさんは何て?」



のぞむ
「今までの経験が邪魔になってうまくいかないことがあるんだって。

  昔はIT関連とか教育関連とか、小難しいことをやってたんだけど、今は現場で働きたいんだって。
  経験が少ないのは不利だけど、中には『優秀すぎるんでそこまでの仕事は出せません』って断られたこともあるんだってさ。」



博士
「君もずいぶん小難しい話についてきてるね。まぁいわゆるアレだな、『雇用のミスマッチ』っちゅうやつか。」



のぞむ
「今宵のミス近藤真彦!?
  違うよ、おかまバーの話じゃないよ。」



博士
「ギャグセンスが子どもじゃないだろ… おっさんと気が合うのもわかるな。


  要は企業が欲しい人材と働きたい人の能力や経験が合ってないってことじゃ。大抵は、能力がないのに時給に釣られてできますやれますってくるパターンなんだがな。そのおっさんは逆のパターンだが、実際そういうインテリが『俺はこんなツマラン仕事をする人間じゃない』みたいなことを言って辞めていったケースなんかもあるのかもしれんの。」


のぞむ
「おっさんはインテル入ってるの?確かに小難しいことをいう人だけど、とりあえずやらせてあげればいいのにね。どうせ派遣なんだし。」



博士
「派遣の事情も良くないからな。派遣で仕事を探そうという人と、派遣を使おうとする企業が入口から意識が違うのかもしれん。」



のぞむ
「そうだ、おっさん言ってた。『派遣に対してちゃんと仕事を教えないんだ。放っといて合う奴だけ残ればいい、くらいにしか考えてない』って。」



博士
「そうじゃな。本来派遣は即戦力のスペシャリスト。社員より高いスキルで高時給。それが今じゃいつでも替えがきくけど、当たりは少ない。すぐ辞めても手続き簡単。とりあえずの頭数の扱いじゃ。採用する方もされる方もなかなかモチベーションが上がらんな。」



のぞむ
「はぁ~、もっと働きやすい世の中にならないかなぁ。これじゃ大人になっても安心して派遣にも登録できないよ。」



博士
「いや、派遣で安心て。派遣に登録する前にちゃんと就職できるようにならんと…


  もっとも新卒でも転職でも、就職しても、すぐに辞めてしまうことのほうが問題じゃな。おっさんは何で仕事を辞めちゃうんだい?」


のぞむ
「面接でいつもそれを聞かれてウンザリしてるって。いろいろあるけど、最後は人間関係じゃないかって。辛い時も頼れる人がいるうちは頑張れるけど、あぁもう頼れないって思ったらダメみたい。同じ仕事をしているのに、価値観っていうか目指す方向が違っちゃうっていうか。もちろん、そんなストレートには言わないけどって。」



博士
「そうじゃな。面接ではなかなか言えんな。人間関係を築く能力が低いって言ってるようなもんじゃからな。しかし、つまるところほとんどの人はそうなんじゃないかな?怪我や病気以外は、例えば評価が低いっていうのも上司との人間関係が大きいだろうし、仕事がキツ過ぎるっていうのも、周りの仲間とのやり取りだったり、現状を上層部に訴えたり、やれる人はやってきているんだろうから。何のためにそれを頑張るかというのは、人によってお金だったり、信念だったりあるんじゃろうけどな。」


のぞむ
「ぼくは仕事仲間もそうだけど、家族や友達、皆が笑って暮らせるのがいいな。自分も含めて誰かが辛い気持ちを背負い込んじゃうなら、そうまでして続ける意味が分かんないや。」



博士
「うむ。おっさんもそうなのかもしれんな。しかし、それは見ようによっては甘えと取られる場合もある。それを背負った上で乗り越えるものだ、と。

  いずれにしても、その辺が価値観なんじゃろうな。大事なのは、価値観が違うからいけないのではなく、色んな価値観があることを認めた上で、それらをどう活かせば仕事にとってプラスかを考え、実行できるかじゃ。」


のぞむ
「でも、おっさんはそんなグイグイいくタイプじゃないよ。」



博士
「うむ。違う価値観をまとめ新たな価値観を提示し皆を引っ張る。誰にでも出来ることではない。だから、そうした能力を持つ人間が高い評価を受けるのは当然だ。


 さっきも言ったが、大事なのはそれが出来ないからダメじゃない。できる人やればよい。リーダーに理解を示し、それに従えることだってある意味能力じゃ。

 また、メンバーが変われば役割も変わる。コイツはダメだ、と切り捨てるのではなく、コイツを活かせるのはどのポジションだろう、コイツをうまく動かすのにどんな価値観を植え付けてあげたらいいだろう、と考えることが大事じゃ。」


のぞむ
「そしたら派遣をほっぽっとくなんてあり得ないよね。」



博士
「そうじゃな。ただ、ほっぽられたから何も出来ません、じゃ面倒見る気もおきんから、やはりお互いの歩みよりは必要じゃな。そうなるためには、今の派遣制度は根本から変えていかんといけん気がするが。ただ、わしにはどうにも出来ん。」



のぞむ
「おっさんにも頑張れって言ってみるよ!博士が言ったようなことが一人でも多く伝われば、少しずつでも良くなるかもしれないし。」



博士
「のぞむくん、ありがとう。おっさんに伝えてくれ。辛くて辞めたくなっても、皆それぞれの立場でうまくやろうともがいてるって思ってみてくれ。その積み重ねでしかのぞむくんたちの未来は変えていけんのかもしれん。簡単に辞めてしまうことはせっかくの積み上げを崩すだけなのだと。」



のぞむ
「おっさん、まだ仕事見つかってないんだけど…

  ま、頑張ってもらって、ぼくの派遣ライフを明るくしてもらわないとね!」


博士「…」
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