posted on 2013年6月2日日曜日

犬との共存

のぞむ
「博士。こんにちは。」


博士
「こんにちは、のぞむくん。おや、その犬は?」


のぞむ
「佐助だよ。かわいいでしょ。」


博士
「ほう、柴犬じゃな。かわえぇのう。のぞむくん、犬を飼っておったのか。」


のぞむ
「ううん。さすけはおっさんの家の犬だよ。散歩をさせてもらっているんだ。」


博士
「ほうほう、おりこうさんじゃな。さすけ!、ほれ、おいで。」


さすけ
「・・・(トコトコトコ・・・プイッ!)」


博士
「あれ?途中まで来たのに直前でプイッっと行ってしまったぞ。嫌われてしまったのかの?」


のぞむ
「さすけはいつもこうなんだよ。おっさんにでさえ、ダッシュで近づいていくのに飛びつきはしないんだ。」


博士
「柴犬ってのはそういうもんじゃっけ?警戒心が強いというのは聞いたことがあるが・・・」


のぞむ
「でもおりこうでかわいいよ。鍛えてないだけで、持ってるものは天才並みだって。」


博士
「親バカかっ。ま、無駄吠えもせんようじゃし、のほほんとしてかわいらしいな。で、お散歩はもう行ってきたのかい?」


のぞむ
「うん!ウンコを2回もしたよ。2回目はさすがにやわらかくて取りづらかったけど。しかも、他の犬のウンコのそばにするもんだから、混ざっちゃいそうになったよ。」


博士
「おや、他の子のウンコは取ってあげないのかい?」


のぞむ
「え~、だってそれは飼い主の責任でしょ。さすけのウンコは全部取るけど、他の子のは知らないよ。」


博士
「そりゃそうじゃが・・・ ゴミ捨て場はキレイにするのぞむくんにしては意外じゃな。」


のぞむ
「悪い飼い主を甘やかすようなことはしたくないんだ。ホントは拾ってあげてキレイになればいいと思っているよ。けどそうやってイライラしながら散歩しても時間だってかかるし、さすけだって楽しくないし、自分の犬をしっかり面倒見ることで精一杯だよ。

 さすけだって、人の家の塀とか敷地にかかるようなところとか、公園だって砂場の中とかではおしっこだってさせないようにしているよ。誰かが見ていて『あの犬め!』なんて思われたら、さすけがかわいそうだし。」


博士
「そうか。確かに犬はちっとも悪くない。どこでしていい、しちゃいけない、なんて分からないものな。全ては飼い主のそこでさせていい、させちゃいけない、という基準に従っているだけじゃものな。

 ただ、人によっては公園の垣根とかでも、子どもがボールを追って触ったりするかもしれないからおしっこもさせるな、とか、おしっこさせたら水を流せ、ウンコをさせたら砂をかけろ、とか気にする人もおるな。」


のぞむ
「犬嫌いの人だっているからね。嫌いじゃなくても自分で飼っていない人は、キレイで当たり前と思っているからね。犬のウンコ踏んだとか、あり得ないことだと思うよ。」


博士
「ふむ。地域の住民の理解と隔たりがあってはいかんな。昔から犬を飼っている人の中には、犬は外飼いで糞尿は犬小屋のそばで犬が自分で決めてするもんだと思っている人もいるらしい。自分で穴を掘ったり土をかけたりする習性もあるからの。

 じゃが、最近は室内飼いも増えたし、トイレも家の中で出来る子、外じゃないと出来ない子、また去勢や避妊の有無でマーキングをしたりしなかったり、外でも場所を決めて用を足す子とどこでも急にしてしまう子など、犬種や生活環境により昔と比べて様々な犬がおる。そうしたことを理解して、それぞれの犬が出来るだけ住民に迷惑をかけないようにすること、そしてそれを地域の住民も理解しておくことが大切じゃな。」


のぞむ
「うん。さすけはウンコをするときには、散々くるくるくるくるくるくる回ってからするよ。お友達のラブラドールちゃんはいきなりしゃがんでしちゃうし。それと、何回もウンコしたり調子が悪いときはやわらかくて取りにくいウンコのときもあるよ。葉っぱとか道路にこすれついちゃったりしたときは砂をかけたりするし。お尻で構えてキャッチする人とかもいるけど、さすけは気にしてうまく出来ないときもあるから、ちゃんと出させてから取るようにもしているよ。」


博士
「そうじゃな。さすけのそうした習性を全部理解してもらうのは難しいが、どんな状況でも後始末をきちんとしようという工夫は大事じゃ。みんながちゃんとやっている中で、放置するのがいけないという雰囲気を作っていくのじゃな。すれ違う飼い主達がみんな当たり前のように散歩バッグを持って、ウンコを拾うことも散歩のひとつということが、すべての人にとって当たり前になるのが良い。

 おそらくじゃが、放置してしまうのは早朝や夜中に散歩をする人が多いんじゃないかな?人にあまり遭わず、ウンコをしても暗いから分からないとか、そういう中で散歩をしている人は『ちょっとくらい』とか『自分くらい』とか思ってしまうのかもしれん。そういう人は主に時間がない忙しい人達なんじゃろうが、そうした環境で犬を飼うことが果たして犬にとっても人にとっても良いことなのか、ということを考える必要があるかもしれんな。散歩をするだけ良いのじゃろうが、『あの飼い主め!』と周りに思われていたら、犬だって言葉は分からなくても嫌な気持ちになるかもしれん。」


のぞむ
「それと、たまにノーリードで散歩してる犬を見るけど、怖いよねぇ。ゼッタイ言うことを聞くって自信があるのかもしれないけど、急に興奮して飛び出しちゃうとかあるんじゃないのかな。さすけなんか、風が吹いて葉っぱが転がったりするとすぐ飛びつくから、ゼッタイ車に轢かれちゃうよ。人がいない広い公園とかだとしても、もしそれでさすけが轢かれちゃったらとか考えると、ゼッタイ離せないね。」


博士
「『ウチの子はおりこうだから』『ウチの子は臆病だから』とか言うが、そうしていることで周りに余計な気を使わせていることに気づかないんじゃな。大人しくて人の言うことをよく聞く犬だって、相手の犬に急に威嚇されたりしたら、本能として臨戦態勢に入るじゃろい。小型犬や室内犬だって闘争本能はあるじゃろうしな。どんなに人と分かり合っていたとしても、『人とは違う』面を理解しておかんと、何かあったときにかわいそうなのは犬じゃし、責任を取るのは飼い主じゃ。まさに、子を持つ親の気持ちで接しなければな。」


のぞむ
「そう考えると、犬を飼うって大変だね。かわいくて楽しいけど、犬もそうであって欲しいからね。」


博士
「そうじゃな。糞尿放置が多い地域ではペット税なんてのも検討されたりするくらいだし、飼い犬が他人を噛んでしまったりしたときの傷害保険なんてものある。人の社会で共存していく為には、『犬も従える人のルール』を人が考えてあげないといけない。犬にとっては窮屈かもしれんが、そうまでして一緒にいたいと想う飼い主の気持ちは、犬には伝わるはずじゃし、そうした飼い主に出会えたことで、犬も幸せを感じるはずじゃ。」


のぞむ
「でも、いまだに捨て犬とか殺されちゃう犬とかもいるんでしょう?かわいそうだよ。」


博士
「うむ。そここそが、すべての原因じゃな。犬を飼った、けど面倒な決まりは鬱陶しい、じゃあ犬はいらない。そんな理屈があり得る人がいる限り、すべての犬が幸せになれる日は遠い。散歩をさせることだって、ウンコを取ることだって、周りに迷惑をかけないしつけをすることだって、犬がいる幸せを得る為にはみんな必要なことなんじゃ。そうした苦労や手間をかけるからこそ、いっそう犬がいとおしくなる。見た目のかわいさ以上にいとおしいのじゃ。また、そうした気持ちにさせてくれる存在なのじゃな。」


のぞむ
「じゃあ、博士。かわいそうな犬達を引き取ってあげてよ。ぼく、散歩を手伝うよ。さすけだって仲良くするよ。」


博士
「うむ、そういう気持ちは大切じゃが、それもまたよく考えねばいかん。自分のところへ来たらすべての犬は幸せだ、と思うのは早計じゃ。さすけだって合う犬、合わない犬はいる。今の自分の生活に犬がいて、他の事もちゃんと出来つつ犬の世話も出来るかどうか、犬のために犠牲になることは何か、またそれに耐えられるか、など考えねばならないことはたくさんあるのじゃ。最終的には出来る出来ないじゃなくて受け入れる覚悟、とでもいったほうがよいかの。」


のぞむ
「博士は根性なしだから、覚悟が出来ないの?」


博士
「むむむ。のぞむくんは相変わらず重い直球を投げるの。まぁ平たく言ってしまえばそうじゃが、じゃあ今ここで会ったさすけをかわいがることで今は満足じゃし、それ以上を望んだとき、改めて考えてみてもよいかのう?」


のぞむ
「そうだね。ぼくもさすけがいたら十分だよ。ねぇ、さすけ。」


さすけ
「・・・(ポケ~...ハッ、ヘッヘッ)」


のぞむ
「今、聞いてなかったでしょ...ま、それがさすけらしくていいけどね。」


博士
「この問題はいろいろな視点で考えてみる必要があるな。さすけと暮らして楽しいこと、困ったこと、何かあったらまたさすけを連れてきてくれ。な、さすけ、また来てくれるよな?」


さすけ
「(ハッ!? フンフン)」


のぞむ
「そうだ、博士。犬の言葉が分かる何かを作ってよ。バウリンガルじゃないよ。ほら、ここは妄想世界だから、博士が作ったって言えばなんでもありだし、さすけにもしゃべらせちゃえばいいよ。


博士
「ん?最後のほうはよく聞こえんが、分かった。次に来るときまでに用意しておこう。さすけの言葉も聞けるはずじゃ。」


のぞむ
「さすが!博士。じゃ、さすけ、おっさんのところへ帰ろう。」


さすけ
うん。わかったよ、のぞむくん。また来ようね。


のぞむ・博士
「えぇ、もう聞こえるの!?」






Powered by Blogger.