posted on 2014年3月25日火曜日

【読書】空飛ぶタイヤ



のぞむ
「博士。池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』を読んだよ。」


博士
「あれ?半沢直樹のバブル組じゃなかったのか?」


のぞむ
「うん。あれも読んだけど、とりあえずタイヤのほうが面白かったのでそっちの感想から。」


博士
「これってあれじゃよな。某スリーダイヤのエンブレムでお馴染みの・・・」


のぞむ
「あぁ。作中では楕円が三つのスリーオーバルだって。財閥系の重工・銀行・自動車のグループっ
てまんま三菱だよね。」


博士
「あ、言っちゃった。まぁわしも三菱車愛好家じゃから、その節は販売店からは良くしてもらったし、大変だった話も聞いたがな。」


のぞむ
「三菱のクルマって、好きな人は好きだよねぇ。ぼくはRVRに乗りたいな。」


博士
「わしは、ランサーGSR→eKスポーツ→パジェロ→タウンボックスと乗り継いでおる。一度はランエボに乗りたかったがな。」


のぞむ
「パジェロっていつの?やっぱり二代目が好きだったなぁ。」


博士
「無論、二代目じゃ。ロングの3500ccガソリン車じゃ。燃費、税金、車検の全ての維持費でアップアップしてなくなく手放してしまったがな。」


のぞむ
「今のエコカーなんかよりよっぽどいいよね。重厚で無骨でさ。ま、これからの時代には合わないのかもしれないけど、余裕があれば乗りたいクルマだよね。」


博士
「で、そんなコアなユーザーに愛されている三菱自動車、もといホープ自動車のトラックのタイヤが外れて歩行者が亡くなるという事故と、そうした欠陥を隠蔽していた事件が起きたわけじゃな。」


のぞむ
「実際にあった事件・事故だけど、一応フィクションなんだって。ま、似たようなことはあったろうけど、取材をして事実を明らかにするというよりは、そこに関わる人や巻き込まれた人達の人間模様を描いた感動エンターテイメント小説だって。」


博士
「ふむ。主役が事故を起こした運送会社の社長じゃな。そして自動車メーカーの販売部課長、系列の銀行の調査役が絡んできて、悪役は自動車メーカーのお偉いさんか。」


のぞむ
「うん。この人の作品って言っても下町ロケットとかしか読んでないんだけど、主要な人物が何人か出てくるんだけど、結局絡まない人同士がそれぞれの場面でそれぞれのために頑張っていて、最後はみんながハッピー、みたいな感じになるのが面白いんだよ。」


博士
「なるほど。巻末の解説には個を書くより集団を書くのがうまいと評してあるな。半沢直樹は思いっきり個じゃがな。」


のぞむ
「そうだね。もともと銀行に勤めていた人らしいから、半沢直樹みたいな世界観があって、具体的にああいうヒーロー像があったんだろうけど、それ以降の作品は、いろんな人のそれぞれの立場からの視点が増えて、面白みが増したんじゃないかと思うよ。」


博士
「主人公が中小企業の社長というのも親近感が湧いて、応援したくなるの。」


のぞむ
「社長はもちろん、社長を支える番頭的な人や社員たちもいつもながらアツイよね。基本、みんないい人なんだよね。」


博士
「物語的には絶対的な悪、今回で言うと自動車メーカーの常務じゃが、そういった存在はあるものの、それ以外は最初イヤな人でも、そうするだけの理由があったりで、どの人物にも感情移入しやすいと言えるかの。」


のぞむ
「沢田さんかな。最初は、大企業のいけすかないヤツだったけど、会社の不正を知って、告発しようとしたり栄転に目がくらんで取り込まれたり、最後はとことん会社に残って行く末を見届けようと思ったり、フラフラしてるようだけど実際のサラリーマンの揺れ動く感情をリアルに出していたと思うよ。」


博士
「赤松社長も、ただの二代目社長じゃったが、困難を乗り越えていくうちにいい社長さんになっていったな。クリスマスの夜に高速で突っ込んじまおうとして、気付けば家で家族が待っていて、死ななくて良かったと思うシーンは思わず涙もんじゃ。」


のぞむ
「銀行の井崎も自分なりの正義で頑張っていたよね。グループだからってホイホイ融資せず、銀行マンとしての矜持を持っていたよ。」


博士
「そして、会社の悪はついばまれた。じゃが、その根が完全に絶たれたかというと、そこはまた微妙な感じじゃな。財閥系のグループ組織としての体質は、当事者以外変わっとらん印象も受ける。」


のぞむ
「そういうあたりもリアルなんだろうね。別の問題が起きれば、別の誰かが暗躍してるだろうし。三菱だって、結局何がどう変わったかなんてユーザーレベルじゃ分かんないしね。」


博士
「結局世の中に対して大きな事件であっても、世の中そのものが大きく変わることはないということじゃな。赤松社長はじめ、被害者の家族や関わった人達には大切な何かが刻まれたんじゃろうし、それはそれでハッピーエンドじゃな。」


のぞむ
「人が亡くなってるから、何もかもスッキリとはいかないけど、前向きに終わったよね。下町ロケットなんかは本当にスカッとしたけど。」


博士
「因みにこの原作、ドラマ化されとるんじゃな。赤松社長が仲村トオルで、沢田が田辺誠一画伯。井崎が萩原聖人で、悪役の狩野常務に國村隼か。國村さんは強面の悪役が似合うのう。」


のぞむ
「あと高幡刑事の遠憲さんもいいし、赤松運送の常務に大杉漣だって。」


博士
「WOWOWで放送したそうじゃが、自動車メーカーを叩く内容があるから、スポンサーのある地上波では難しかったらしいの。」


のぞむ
「三菱以外ならいいのに。」


博士
「そういうわけにもいかんのじゃろう。しかし、WOWOWでは下町ロケットもドラマ化しとるし、なかなか見ごたえのある作品が多そうじゃな。」


のぞむ
「地上波のドラマって最初に1クールとかの枠ありきだし、その中で視聴率取らないといけないし、うまいこと話題性とかないとなかなか難しいんだね。」


博士
「逆にその枠に合わせることでつまらなくなってしまってももったいないしな。話題性、というより話題づくりにお金がかかるじゃろうしな。」


のぞむ
「うん。映画もそうだけど、やっぱり原作へのリスペクトは必要だしね。」


博士
「そうじゃな。半沢直樹もドラマは面白かったそうじゃが、続編をやるとか、堺雅人がCMでずっとキャラひっぱりっぱなしだったりとか、話題性主導になってきてしまい、原作リスペクトは感じられなくなってきているな。」


のぞむ
「池井戸さんの話はどれも面白いから、WOWOW→DVDの流れか、ちゃんと作った映画で見たいな。ゴリ押しキャストの地上波なんかで見るよりは。」


博士
「うむ。では、空飛ぶタイヤのDVDでも借りてくるかの。」


のぞむ
「うん。そうしよう!」


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